カシオが最強のスマートウォッチを開発


2011年末、カシオ計算機・時計事業部の南俊二氏(現新規事業開発部長)に一本の電話がかかってきた。「これからはつながりの時代だ。新しい商品を作るから、力を貸してくれ」。声の主は当時の樫尾和雄社長(現会長)。それがカシオのスマートウォッチ開発のはじまりだった――。

2016年1月6日、カシオは同社初のスマートウォッチ「WSD-F10」を発表した。価格は税別7万円、3月下旬の発売だ。円形で、文字盤には液晶がついている。OS(基本ソフト)にAndroid Wearを採用している点では通常のスマートウォッチと変わらないが、他社とは一風変わった製品になっている。

 

超頑丈、スポーティなスマートウォッチ

スマートウォッチはスマホの付属品としての性格が強く、各社とも機能面の差は少ないが、カシオはアウトドア用途に特化した。5気圧防水で水辺でも使えるほか、米国国防省が定めるMIL規格(軍用企画)に準拠した耐久試験をクリアした頑丈さが売りだ。

モノクロ液晶のモードは1カ月以上の連続使用が可能だ

あらかじめインストールされているアプリもアウトドア向け。登山用の地図や釣りの時に潮の満ち引きを知らせるアプリ、ランニング時に活動量を確認するアプリなどが盛り込まれた。これらは本体側面の3つのボタンで操作することができ、運動中でもスムーズな操作が可能だ。

それだけではない。「二層液晶」という特殊な構造を備えている。既存の製品は電池容量が小さい割に消費電力が高く、バッテリーが1日前後しかもたない弱点があった。そこで、カシオはモノクロ液晶を搭載し、時刻のみを表示できるようにした。この状態なら1カ月以上の連続使用が可能だ。通常モードと組み合わせることで、大幅に電池持ちを延ばすことができる。

カシオは1980年頃から辞書やゲーム、GPS、カメラなど、さまざまな変わり種時計を発売してきた。2000年からは携帯電話事業にも参入するなど、腕時計と電子機器の両面で事業を展開してきた稀有な会社だ。その点からすればスマートウォッチへの参入は自然だった。しかし、4年にわたる開発は苦難の連続だったという。

カシオは40年近く機能性時計の開発に取り組んできた歴史を持つ

開発のきっかけは冒頭のとおり、和雄会長の号令で始まった。当初のキーワードは”つながる”こと。プロジェクトのトップには和雄会長の長男で現社長の和宏氏が就任、時計やデジカメを初めとした様々な部署から集めた20人ほどのメンバーで始まった。

和宏社長はメンバーに「単に”モノ”を売るのではなく、それを用いて行う”コト”を提供しなければならない」と何度も伝えたという。和宏社長の下で開発を主導した南俊二新規事業部長はこう語る。「当時はスマホの普及で無線通信が急速に拡大していた。ユーザーの”一等地”である左手首に端末をつければ、色々なことができると考えた」。

 

作っては散っていった、試作品の数々

プロジェクト開始から1年。2012年末には第1号モデルが完成。この頃はバンドに四角いディスプレーがついたシンプルな形で、右下にマイクが付いていた。携帯電話で通信してアプリを動かす点は現在と変わりないが、独自OSを搭載していた。

OS(オペレーティングシステムOperating System)は、コンピュータにおいて、ハードウェアを機能毎に抽象化したインターフェースを利用者またはアプリケーションソフトウェアに提供するコンピュータプログラムである。

Wikipedia参照

インターフェース (interface) はインタフェイス、インターフェイスとも書き、英語で界面や接触面、中間面
どといった意味を持ち、転じてコンピュータと周辺機器の接続部分を表すようになった。

だが、この第1号モデルは立ち消えとなった。「何に使うのか?」という指摘に対し、十分な答えを出せていなかったからだ。また、当時は「スマートウォッチ用の部品がなく、スマホの部品を応用していた。今思えば完成度は低いものだった」(南氏)。

失敗にめげず、翌年には試作第2弾が完成する。こちらは防水機能やセンサーを持たせ、スポーツのシーンで使うユーザー向けに売り出す考えだった。しかし、これも挫折に終わる。スポーツ用途には十分すぎるスペックを持つ一方、防水にする過程でマイクを搭載できなくなった。当初の”つながる”というコンセプトから後退するものだったからだ。

スペックとは、英語で specspecification の省略形)と言うなら仕様書のことであるが、和製英語の範疇では一般に工業製品に期待される性能のことである。

Wikipedia参照

2度の失敗によって試作品の製作はついにストップ。企画の練り直しを余儀なくされた。厳しい状態だったが、和宏社長の尽力もあり、チームは何とか存続する。

そんな中、少しずつ追い風が吹き始める。各社がスマートウォッチを発売したことにより、部品メーカーもそれに対応した部品を出すようになってきたのだ。先行する他社の製品が汎用用途中心だったため、カシオはアウトドア用途に特化することを決め、開発を再開する。

徹底したのは、アウトドア用途に耐えうる頑丈さと、時間を伝えるという時計としての機能だ。そこに生かされたのが時計事業の技術。「G-SHOCK」で培った耐ショック・耐防水技術により、マイクを搭載した状態でも5気圧防水が可能になった。二層液晶も、もともとはアウトドア用腕時計「PRO TREK」で採用されていた技術を発展させたものだ。

コンセプトとアイデアを固め、2014年夏、開発チームは米国のグーグル本社へ向かった。Android Ware搭載に向けた交渉をするためだ。Androidを搭載し、より多くのアプリを使えるようにすることが必要だと考えた。

グーグルに対し、独自機能の搭載だけは譲るわけにいかなかった

カシオの訪問をグーグルは歓迎したが、二層液晶や防水マイクなどの機能については積極的でなく、実現可能性を心配する声も上がったという。

だが、製品の差別化のためにも、ここだけは譲るわけにはいかない。カシオは粘り強い交渉を繰り返し、最終的にグーグルの賛同を取り付けることができた。

デザイン面でも、「円形にするか、四角にするか」という問題があった。開発チームでも意見は2つに分かれたという。ただ、それまでのアウトドアウォッチは、高度や気圧などを時計の針で視覚的にわかりやすく表示するケースが多かった。こうした表現をスマートウォッチで再現しようとすると、円形が1番ということに落ち着いたという。

 

膠着市場に風穴を開けられるか

紆余曲折を経て、2015年春に最終試作品が完成。開発チームが和雄会長に見せたところ、特別、製品を褒めることはなかったが、いつまでも手元で触っていたという。「会長は製品を気に入ると、手元から離さないクセがある」(南氏)。ようやくゴーサインが出た瞬間だった。

3月の発売に向けて期待は膨らむ一方、懸念もある。スマートウォッチ市場自体が、さほど活況を見せていないことだ。また、カシオが販売する既存のアウトドア時計と市場を食い合う可能性もある。

南氏は「アウトドア時計とは基本的には別物で、共存は可能。場合によって使い分けるような使い方をして欲しい」と自信を見せるが、実際にユーザーがどのような行動を取るかは未知数だ。

期待されながらも、なかなか普及しないスマートウォッチ。デジタル機器と時計の両面を知り尽くしたカシオが膠着状態に風穴を開け、市場を切り開けるか。4年超の歳月を経て、カシオはスタートラインに立った。

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