コーヒー市場まずくなりすぎて規模半減?価格競争の末路


「では、不毛でない値下げ合戦なら、いいのでしょうか?」
先日、筆者はある方からこのようなご質問を頂いた。利益を削って価格を下げて戦う「不毛な値下げ合戦」は避けるべきだ、という話をした後だった。 この質問には、価格戦略を考える上で重要なヒントが隠されている。そこで、まず「不毛な値下げ合戦」について考えてみたい。

価格競争で業界全体が利益を削り疲弊している状況が続くと、いずれ品質にも手を付けざるを得ない。たとえば1960年代に始まった米国コーヒー業界は、まさにそういう状況に陥っていた。その結果、コーヒーの出がらしを商品として提供するなど品質を下げて、顧客離れを引き起こした。当時米国人1人当たり1日3.12杯のコーヒーを飲んでいたが、40年後には1.5杯と半分以下になった。「米国のコーヒーは不味い」という評判が定着し、市場は半分以下になってしまったのだ。

値下げ競争は企業の「体力勝負」だ。スポーツの「体力勝負」は、体力の限界まで追い込むことで体力の限界値が徐々に上がる。しかし、利益や品質を削った値下げ競争の体力勝負においては、安くても低品質な商品を提供される顧客は徐々に離れ、企業の体力は徐々に失われていく。その先にあるのは企業の淘汰だ。行き着く果ては、まさに米国コーヒー市場が半減したように市場の大絶滅。だから「不毛な値下げ競争」なのだ。

幸い、米国コーヒー業界では「美味しいコーヒーを提供しよう」と考える人が現れて、スターバックスコーヒーなどのようにスペシャリティコーヒーを提供する会社が生まれ、価格競争から価値競争に転じた。

スターバックス(英: Starbucks Corporation、NASDAQ: SBUX)は、1971年にアメリカ合衆国ワシントン州シアトルで開業した、世界規模で展開するコーヒーのチェーン店である。1986年に、エスプレッソをメイン商品としてテイクアウトと歩き飲みが可能なスタイル(シアトルスタイル)でのドリンク販売を始め、後に北米地区全土に広がったシアトルスタイルカフェ・ブームの火付け役となった。

Wikipedia参照

 

不毛でない値下げ競争

では、冒頭の質問のように「不毛でない値下げ競争」とはどのようなものか。
値下げのなかには、利益を削らない値下げもある。最新技術の活用により、より低いコストで提供できるような新しいコスト構造を実現し、利益と品質を確保した上で価格を下げる方法だ。

たとえば、かつての生命保険業界では主に営業職員が商品を販売していた。人手や営業拠点などの販売コストはすべて保険料金に転嫁されるので、保険料金は割高になっていた。この伝統的なコスト構造を大きく変えたのが、2008年に開業したライフネット生命保険だ。生命保険をネット経由のみで販売することで、販売コストを削減して保険料金を大きく下げた。これは、最新技術を活用してコスト構造を変え低価格を実現した例だ。

ライフネット生命保険株式会社(ライフネットせいめいほけん、英名:LIFENET INSURANCE COMPANY)は、東京都千代田区に本社を置く、日本の生命保険会社。第二次世界大戦後初、日本国内では74年ぶりに国内外の保険会社を親会社としないで設立された独立系生命保険会社であり、保険販売にインターネットを用いる生命保険会社である。

Wikipedia参照

 

「歯を食いしばってでも、がんばって値下げ競争を勝ち抜け」という根性論には限界がある。価格勝負をするのならば、利益や品質を削って価格を下げるのではなく、利益も品質も確保した上で、智恵を絞り技術を活用してコスト削減を図るべきなのだ。

しかし、ここに落とし穴がある。最新技術を活用して低コスト構造を実現して価格勝負に持ち込んでも、それだけでは不十分なのだ。いずれライバルが追いついてくるからだ。

ライフネット生命の創業から8年目となる現在、ライバルのネット生保が増えてきた。生保業界では、すでに「ネット専業だから低価格」だけでは差別化できない状態になっている。

そこでライフネット生命も、当初からわかりやすいシンプルな商品構成、保険の簡易請求の実現、業界で唯一の保険料内訳公開などによって顧客満足度第1位を獲得するなど、低価格を売りにするだけでなく企業努力を重ねている。

利益を削った「不毛な値下げ競争」は、最終的に顧客に対する品質低下を招くので避けるべきである。だから同じ値下げ合戦であれば、新しいコスト構造を実現し、利益を確保した「不毛でない値下げ競争」が望ましい。

しかし本来は、価格だけに頼らずに常に高い価値を提供し続けることを追求すべきなのである。
(文=永井孝尚/ウォンツアンドバリュー株式会社代表)

●永井孝尚(ながい・たかひさ)
ウォンツアンドバリュー株式会社代表。1984年に慶應義塾大学工学部卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。IBM大和研究所の製品プランナーとして企画した製品がバブル崩壊で大苦戦するも、プロモーションの傍らで全国を駆け回りセールス活動を展開、さらに製品開発マネージャーも兼任し3年間で多くの大規模プロジェクトを獲得する。98年より戦略マーケティングマネージャーとしてCRMソリューションの戦略策定・実施を担当し、市場シェア1位と市場認知度1位獲得に貢献。同社ソフトウェア事業で事業戦略担当後、人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を通じて事業の成長を支える。2013年に30年間勤務した日本アイ・ビー・エムを退職。オフィス永井を設立(2015年1月、ウォンツアンドバリュー株式会社に商号変更)。ビジネスパーソンの成長支援を通して日本企業がより強くなることを目指し、マーケティング・戦略などの講演・研修を提供している。主な著書に、シリーズ50万部となった『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズ(全3巻、コミック版全3巻、図解版)、『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』、『残業3時間を朝30分で片づける仕事術』(以上、KADOKAWA中経出版)、『「戦略力」が身につく方法』(PHPビジネス新書)などがある。

・問い合わせ先:永井孝尚オフィシャルサイト

 

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