楽天社長 24時間仕事バカ


楽天が加速している。どうやら台湾進出で世界への足がかりを掴んだようだ。だが、そのキーワードは恐ろしく人間臭い。「しつこくやれば、できないことはない」「できるまでやめない」。これぞ、20年後に世界一を目指す三木谷イズムの神髄である。

三木谷浩史

Hiroshi Mikitani
1965年神戸市生まれ。大学時代はテニス部の主将。一橋大学商学部卒業後、日本興業銀行入行。93年、ハーバード大学MBA取得。97年エム・ディー・エム(現楽天)設立。01年には米フォーチュン誌が「世界の次世代経営者25」に選出した。
楽天が世界一になるまで「あと20年」の根拠

楽天が世界一になるまで「あと20年」の根拠

「僕はビジネスのオタクみたいなもんだから。夜、眠っていても仕事のことを考えている。もう病気ですよ、病気(笑)。普通の人に、真似をするのが難しいのはわかる。だけど、僕みたいな人間が、どうしても、あと何人かうちの会社には必要なんです」
三木谷浩史はそう言う。何のために必要なのか。楽天を世界一のインターネット・サービス企業に成長させるためだ。株式時価総額で比較するなら、現段階で楽天は6位。世界一になるには、トップのグーグルをはじめ、前方に立ち塞がる5つの巨大ネット企業を抜き去らなければならない。あと何年でその目標を達成できると思いますかと質問すると、即座に「20年後」という答えが返ってきた。
おそらく、20年後の社会のインターネット企業は、今よりももっと桁違いに巨大化しているはずだ。あらゆる分野の企業を凌駕し世界一の企業になっていたとしても、誰も不思議には思わないだろう。いや、確実にそうなる。どうやら三木谷は、そう信じているらしい。世界一のインターネット・サービス企業になることは、世界一の企業になることを意味する。そのために、彼は何よりも、人材を必要としている。
「何をもって世界一とするか。株の時価総額なのか、流通総額なのか、利用者数なのか。考え方はいろいろあるけれど、僕が本質的に目指しているのは、そういうものではない。僕が目指すのは、世界一の仕組みを持った企業です。世界一の人と仕組みを持つ企業を作りたい。人材と仕組みこそが、会社の本質ですからね。世界一の人と仕組みがあれば、世界一の売上や時価総額という結果は自然についてくる。そこまでいくのに、20年。それくらいで、僕の現役人生は終わる。僕の人生はそんなもんで、ちょうどええんちゃうかなと思ってます」
社員2名で始めた会社を世界一の企業に育てることを、「そんなもん」と言い切る。それは驕りでも衒いでもない。彼の本心なのだろう。

 一日の仕事の始めに、各部署から上がってくる日報をチェックする。部外者の目には字の羅列に過ぎないが三木谷にとっては日報が会社の状態を知るための目であり耳。行動目標は具体的な数字に置き換えられる。毎日同じ書式を見ているので、問題のある部分は、浮き上がって見える。
三木谷浩史「格言集1」

三木谷浩史「格言集1」

小さな成功で
自信を築け。

人生一生勉強。すべて勉強。

Get things done.
世の中にはふたつのタイプの人間しかいない。
できる方策を探す人と、
できない言い訳を考える人。

人生は
生から考えるか、
死から逆引きで
考えるかによって、
大きく変わる。

ビジネスモデルはIT企業らしからぬ「絆」

ビジネスモデルはIT企業らしからぬ「絆」

三木谷浩史という人を、上手く説明するのは難しい。彼自身はよく「僕はハイブリッドだから」と言う。大学教授だった父の祖先は家康の時代まで遡る武家の名門、帰国子女の母の祖先は江戸期の豪商の家柄。学問とビジネス、武士と商人のハイブリッドというわけだ。
言葉に違わず、彼の中には相反する性格が混在している。一橋大学卒、日本興業銀行入行、ハーバードMBAという経歴から浮かぶのは、万事にそつのないエリート・ビジネスマンの姿だ。興銀時代は国家間にまたがるM&Aを任されていた。何億円、何十億円の単位のビジネスだ。その彼が、起業当初は月額5万円だった楽天市場への出店契約を取るために、全国を走り回っていた。興銀時代を知る人の中には、三木谷を嘲笑した人もいたらしい。だが彼は気にもしなかった。数人の社員と一緒になって、毎月5万円の契約取りに寝食を忘れて没頭した。
基本は飛び込み営業だ。ほぼ門前払いを食う。そこで三木谷は走ったり、腕立て伏せをしてから営業先に飛び込む裏技を編み出す。息を切らせ汗をかく営業マンを、簡単に門前払いできる人は少ないと考えたのだ。
はっきり言って、泥臭い。けれどその泥臭さを微塵も恥じないのが三木谷の強さであり、それが並のエリートとは根本的に異質な部分だ。そして、この三木谷の性質は、そのまま真っ直ぐに楽天市場のビジネスモデルとつながっている。
「楽天のビジネスモデルは、たとえばグーグルとかアマゾンのようなシンプルなモデルではないわけです。楽天市場というインターネットのショッピングモールを作り、出店者を募る。出店者の増加が楽天の成長につながるのはもちろんだけれど、単純に増やせばいいとは最初から考えていなかった。当初は出店者の方と秋葉原に出かけてパソコンを買い、設置する手伝いまでしたくらいです。パソコンが普及した今でも精神は変わっていない。出店していただけたら終わりではなくて、出店者がどうすれば売上を伸ばせるかを一緒になって徹底的に考える。そのためのホームページ作りのノウハウの提供に始まって、ありとあらゆるきめ細かなサービスを構築してきました。その結果として出店者の方々との間に結ばれた絆が楽天の強さ、その絆まで含めてのビジネスモデルなんです。手間がかかるのは事実だし、ほかのネットビジネスのように、爆発的に世界に広げるのは難しい。けれど、いったんその地域に根付いてしまえば、きわめて堅固です。その堅固さを土台にして、ちょっと遅れはしましたけれど、楽天は世界に進出していきます」

三木谷浩史

出社時間にエレベーターホールが大混雑しているのを見て、その解消法を考えたのも三木谷だった。エレベーターの停止階を制限し、停止しない階へは階段を使うことにした。混雑は一気に緩和され、健康増進にもなった。もちろん三木谷本人も歩く。
三木谷浩史「格言集2」

三木谷浩史「格言集2」

Never too late.

0.1%の改善の積み重ねが、
成功を生む。
そして、大きなチャンスを
的確に掴みとれる。
そういう人を
運がいい人と言う。

精神的
エネルギーレベルを
下げるな。

ピンチの時は、
自分の中に
第三人格を作れ。

月に行こうという
目標があったから、
アポロは月に行けた。
飛行機を改良した結果、
月に行けたわけではない。

台湾進出で掴んだ世界企業になる自信

台湾進出で掴んだ世界企業になる自信

三木谷は昨年、世界進出の第一歩として台湾に楽天市場をオープンした。約1年が経過した現在、台湾楽天市場の出店者の増加率は、かつて三木谷たちが日本で経験したよりも遥かに高い水準を維持している。
楽天ビジネスモデルが海外でもきちんとワークするということは認識してもらえたと思うし、自分でもそれは自信になった。ひとつはっきりしたのは、楽天のビジネスモデルは、世界中で楽天しかないということです。アメリカのeコマースにも、楽天みたいに面倒見のいい会社は存在しない。システムだけ提供するとか、トラフィックだけ提供するというスタイルです。ウチが提供するのは、最先端のテクノロジーと融合したきめ細かなサービス。出店者の方たちと、一緒に汗を流す。そんなことのできる会社は、世界を見渡しても楽天しかないんです」
楽天の提供するきめ細かなサービスは、日本人の得意な分野でもある。楽天市場は、日本独特のビジネスモデルなのだ。それが世界に通用するか否かは、ワールドカップでの日本代表の勝敗と同じくらい興味がある。ひとつだけ危惧があるとすれば、現地スタッフが果たしてどの程度、その日本人的なビジネスを再現できるかどうかだ。
実を言えば、三木谷は台湾進出を通して、なによりそこに自信を得た。台湾のスタッフのこの1年間の成長には目を見張るものがあると言う。
「台湾楽天市場がオープンした当初は、12人の日本人を派遣したんですが、今現在は6人に減りました。あとの73人はすべて現地の、つまり台湾のスタッフです。この1年間で彼らは変わりましたよ。日本の猛烈ビジネスマンだって兜を脱ぐくらいよく働くし、いい仕事をしてくれるようになった」

三木谷浩史|日本人は内弁慶すぎる。もっと自信を持とう。
『成功の法則 92ヶ条』

『成功の法則 92ヶ条』 ¥1,680(幻冬舎)

『成功の法則 92ヶ条』 ¥1,680(幻冬舎)

三木谷イズムの集大成とも言うべき自著の第二弾が上梓された。前著が総論とすれば、本作は各論。成功するための鉄則を、具体的な92の法則にまとめた。楽天の社内での朝会で12年間にわたって三木谷が社員に語りかける中で生まれた、ビジネスを心底楽しみ、人生を完全燃焼させて生きるための成功哲学の集大成。
 日本で楽天市場をスタートさせた時、三木谷は若い社員と一緒に会社で徹夜し、牛丼をかき込みながら、夢を語り、叱咤激励しながら、三木谷イズムとでも言うべき企業精神を育ててきた。日本と台湾とに離れていては、そういう社員教育はできなかったはずだ。どうやって台湾の社員たちの成長を促したのですかと質問すると、三木谷は会心の笑みを浮かべた。
「基本的には同じですね。寝食は共にできないけれど、テレビ会議で毎週のようにミーティングをしてます。どんな話をするのかって? 日本と同じですよ。『やる気はあるのか』と、『やる気がないんだったら辞めろ』って(笑)。それで十分に通じますよ。まあ、それはあくまで雰囲気の話であって(笑)、具体的には、この仕事をする意義だとか、楽しさだとか、あるいは我々が何を目指すのかという目的を話しています。これは単なる営利活動じゃなくて、社会の既得権益と闘って、個人のビジネスを後押しする仕事であり、人と人をつなぐ仕事なんだという僕たちの理想をね。それから、もうひとつは『見える化』です。ひとりひとりの仕事の内容と、結果を誰にでも見えるように数値化し、具体性をもって仕事を進められるようにする。なんとなく頑張るのではなく、具体的に何をどうするのかを明確にして、仕事に取り組む。つまり、日本の楽天と同じことをしている。その方法論は、外国でも完璧に有効です。台湾だけじゃなく、アメリカの社員ともテレビ会議のミーティングで仕事しているんだけれど、これも上手くいってます。『辞めちまえ』と言って、辞める社員はいない(笑)。楽天の企業精神を世界中に根付かせることはできる。それは、最初から自信があったんです。僕はしつこいですから。しつこくやれば、できないことはない。なにしろ、できるまではやめないんですから(笑)」
アジア、アメリカ、ヨーロッパ……。それぞれの地域で、楽天市場の進出のための準備が進んでいる。台湾に続く楽天市場の海外拠点はいったいどの国になるのか、そしてそれは何年後のことなのだろう。この最後の質問に、三木谷は意味深長な答えを用意していた。
「現段階では、残念ながらはっきりとは答えられません。ただし、それは何年後というようなゆっくりした話ではない。それに、ひとつの国から順番に始めるとは限らない。まあ、どの国にしても、最初は小さな規模から始めるつもりです。少人数から始めて、しっかりと楽天の企業精神を根付かせる。そしてその精神を土台にして、ビジネスを大きく育てる。このインターネット時代に泥臭いと言われようが、それが僕たちの戦略であり、それだけはほかの誰も真似できないと思っているんです」

2 thoughts on “楽天社長 24時間仕事バカ

  1. Pingback: shop

  2. Pingback: GVK Bioscience

Comments are closed.